【生保二次】2021年度アクチュアリー二次試験合格体験記

はじめに

生保二次に合格したので、久しぶりに重い腰を上げてブログを書きました。

僕が受験していたときも生保二次の合格体験記を漁っていた記憶があるので(笑)、ある程度ニーズがあれば嬉しいです。

今後はオンライン英会話の体験談などブログにできればと思います。リクエストあれば教えてください!

問題形式

  • H27以降概ね形式は同じ。
  • 第Ⅰ部、第Ⅱ部に分かれており、それぞれ50点。
    • 第Ⅰ部は小問30点、中問10点×2で、小問は穴埋め、訂正、数行の記述。中問は800字程度の記述が2問。
    • 第Ⅱ部は大問が2つ。いわゆる所見と呼ばれるもの。大問1つに対し、2000~3000字程度の記述。
      • 最近は大問1つの中に①②と小問があることも多く、実質の所見部分は25点中15~20点くらい。

試験範囲

  • 教科書
    • 海外事例や歴史的な部分はここ20年ほど出題されておらず事実上の試験範囲外といえるかもしれない。
    • 穴埋め対策のために、教科書に記載のある保険業法保険業法施行規則等の法令は原文のチェックしておいた方が良いと思われる。
  • 保険計理人の実務基準
    • 保険計理人が確認すべき保険数理に関する業務内容のガイドライン。内容は以下の通り
      • 責任準備金が十分に積み立てられているか
      • 配当が公正かつ衡平に行われているかどうか
      • 保険業の継続が可能か、支払能力の充実の状況が保険数理に基づき適当であるかどうか
    • 特に生保2では頻出。業法会計では、概要は記述できるように、細部も穴埋めで覚える。
  • 監督指針
    • 金融庁が保険会社をどう監督すべきかの基準を示したもの。
    • 試験範囲に指定があるので注意。穴埋め対策がメイン。
  • 標準生命表
    • 業法会計上、責任準備金を積み立てるにあたり、死亡率をどう設定するかは指定がある。その死亡率の水準を定めたもの。
    • 教科書の標準生命表の記載は古く、「標準生命表2018の作成過程」が試験範囲になっている。

勉強時間・勉強スケジュール

6月くらいまでは「受かるわけないでしょ…」という状態だったので、あまり勉強できてません。3月までは就活があったので尚更勉強していません。

受かったのは勉強会でかなりの記述量をこなせた事が大きかったかなと思っています。

勉強時間は一次よりは少ないです。ただ、暗記は集中力を要するので一次より精神的には大変な面もあるかなと個人的には思います。

  •  12~3月
    • 勉強時間
      • 50時間
      • あまり勉強は出来ていない。
    • 理解
      • 教科書をペラペラ。生保1,2の教科書を1/3ほど読む。
    • 暗記
      • Anki用のツールを使ってみる。(結果あまりうまいものが作れず没になる)
  • 4~7月
    • 勉強時間
      • 300時間
    • 理解
      • 教科書を真面目に読み始める。アク研にあるワークブックを解きながら該当箇所を教科書等にメモしていくのが自分に当てはまったのでそれを続ける。
    • 暗記
      • 列挙系(例:責任準備金対応債券を特定する要件)等を覚え始める
    • 勉強会
      • 教科書概観、頻出の過去問について議論
  • 8~9月
    • 勉強時間
      • 250時間
    • 理解
      • 実務基準の理解。
      • 過去問に出ていない範囲も少しずつ把握する。
    • 暗記
      • 暗記をメインにし始める。Ankiを再度使用。過去問の第Ⅰ部を中心に暗記を始める。
    • 勉強会
      • 予想中問について議論
  • 10~11月
    • 勉強時間
      • 300時間
    • 暗記
      • 引き続き暗記メイン。未出問題も少しずつ覚える。
      • 監督指針もある程度の精度で暗記。
    • 所見
      • 対策を始める。たくさん読んでたくさん書く練習をする。
    • 勉強会
      • 朝夜それぞれ中問1,2問、土日は所見をみんなで書いて議論
  • 12月
    • 勉強時間
      • 50時間
    • 直近年度の過去問を見て、ヤマを張る
      • ヤマを張ったところが出たので、意外と最後の詰めが重要かも。

内容の外観

概観をつかむ上では太字の章を先に読むと良いかもしれません。

生保1

  • 1章「営業保険料」
    • 死亡率や利率といった基礎率設定の話、料率区分の話といったプライシングの基礎についての記載が充実している。所見のベースとなる。
  • 2章「解約および解約返戻金」
    • 中問として内容を出題しやすいイメージ。勉強はしやすい。
  • 3章「アセット・シェア」
    • 実務基準が重要。後は計算問題もそろそろ出そう。
  • 4章「生命保険の商品開発」
    • 生命保険がどう商品開発されるかのプロセスについて記載がある。アクチュアリアルな部分なのかと言われると疑問が残るが、実務経験の乏しい身にとっては全体像がつかめた。
  • 5章「変額年金保険」
    • 金融工学的な要素があり、理解しにくい部分も多い。
  • 6章「団体生命保険」
    • 勉強しやすい。薄いがここから5点くらい出ると思えばしっかり対策して起きたい。
  • 7章「医療保険
    • 勉強しやすい。所見にも使える内容も多い。(保険期間の短期化、待期間の設定…等)
  • 8章「再保険
    • 再保険会社に勤めていない限りイメージしにくい所が多い印象。
  • 10章「商品毎収益検証」
    • プライシングをする時、販売後も定期的に商品に対しての収益性や健全性を検証する必要がある。その際、基礎率の設定方法や収益性の指標の検討、効率的な計算を行う方法についての記載がある。これも所見のベースになると思われる。

生保2

  • 1章「生命保険会計」
    • 分厚いが、生命保険会計、特に業法会計を勉強する上では重要。
    • まず以下の内容を抑えると全体像がつかみやすいかもしれない。
      • 責任準備金の計算基礎率と保険料の計算基礎率は必ずしも同一でないこと
      • 「標準責任準備金制度」の概要
      • (広義の)責任準備金が以下で構成される
        • 保険料積立金(狭義の責任準備金)、未経過保険料、払戻積立金、危険準備金
  • 3章「契約者配当」
    • 中問になりうりそうな問題が多いが、記述が似ていて大変覚えにくい。直前詰め込め暗記しました。
  • 4章「リスク管理
    • ERMとALMに分かれている。新しい教科書だが、正直分かりにくい。教科書に記載された文章をそのまま覚えるのは容易ではないので、自分で咀嚼して自分の言葉で解答を記述する必要があると思われる。
  • 5章「事業費の管理・分析」
    • 一般の事業会社でも共通して言えることも多いような気がするので、分厚さの割には出題されうる問題は少ないかも?過去問も充実している。 
  • 6章「ソルベンシー」
    • 保険会社は保険金等の支払いを全うするための財政的基盤が必要であり、それをソルベンシーという。保険料積立金以外にも支払能力を充実させる部分があり、それを「ソルベンシーマージン」と呼ぶ。危険準備金、価格変動準備金、純資産の部等が相当する。
    • 大事な章。
  • 7章「内部管理会計
    • 業法会計はロックイン方式と呼ばれる基礎率を固定した方式であるなど、経営実態を適切に表さない場面もある。そのため、市場に整合的に保険会社の価値を評価するEVと呼ばれる指標がある。
    • 他、商品の特性ごとに収支を区分する区分経理の話など。
    • 教科書が分かりにくい。アクチュアリージャーナルやMCEVに関するレビューを参考にすると良いかも。
  • 8章「相互会社と株式会社」
    • 教科書の内容が古く、実質範囲内の部分も少ないと思われる。小問対策がメインになる?

 

参考書

  • 『ソルベンシー規制の国際動向: 保険会社の資本規制を中心に』中村 亮一
    • 教科書に記載のない経済価値ソルベンシーの規制についての記載が充実している。業法会計についても分かりやすい記載がある。
  • 『“全体最適”の保険ALM』森本 祐司、祖父江 正、松平 直之
    • ALMイシューペーパーの記載のみではALMの理解が難しいと思われ、ALMの理解促進につながると思われる。
  • MCEVは、各社の開示を見ると分かりやすい。
  • アク研の資料も有効。
  • (これ以下は読んだことは無いです)
  • 『生命再保険の基礎 生命保険・年金・第三分野商品の再保険入門』石川 禎久
    • 再保険は教科書の記載は薄いが理解が難しいので使えるかも。
  • 『経済価値ベースの保険ERMの本質』森本 祐司、松平 直之、植村 信保
    • ERMも教科書が分かりにくいので使えそう。買っている人は周りにいました。

想定される疑問

  • 実務経験が無いと無理?独学で行ける?
    • 実務経験は無い、もしくは乏しくても戦える。が、実務経験のある人の話を聞ける機会があるに越したことはない。実務経験をやっていないことによる疑問はたくさん出る。
  • 過去問以外の対策は必要?
    • 残念ながらかなり未出問題が出る。教科書に過去問の出題部分をメモして、未出範囲をあぶりだすことを推奨する。
    • 新しく教科書が改訂された部分は出題可能性が高い。
    • 監督指針、実務基準の穴埋め対策も必要。
  • 第一部、第二部の目安の点数は?
    • 所見は採点基準が不明瞭なので、必然的に第一部を固めようという方針になる。
    • 所見で20点以上取れれば足切り回避なので、第一部で40点を取ることを目標に、、というのはよく言われる。
      • ただ、第一部がかなり難しく第二部が簡単な年もあるので臨機応変に。
      • 2020の生保1はかなり小中問が難しい
  • 暗記はどれくらいの精度で必要か?書いて暗記するか、読んで暗記するか?
    • 一言一句暗記はキツイ。文章におけるキーワードをまず覚えて、そのキーワードから連想して文章を思い出すというのが良いと思われる。
    • 毎回書いていては時間がとられる。一方、ある程度書く練習を行うとアドリブ力が増すのも確か。
  • 所見ができる気がしない。
    • とにかく過去問を読む、書くことを繰り返せば、過去問の内容を引っ張ってきてアドリブで書ける部分が増えてくるはず。一回読んだ過去問の所見を見ずに書いてみるのも良い勉強になる。
    • 生保1は商品設計、基礎率設定、リスク管理手法の流れのどこかにスポットが当てられるイメージ。
    • 生保2は個別の章ごとに所見に書く内容を覚えていくイメージ。
  • 計算することはある?
    • 計算問題は100点中5点くらい。ほとんど計算しないので、アクチュアリー一次とのギャップはある。